安さに釣られAGA薬を個人輸入した僕の後悔
僕がAGAを意識し始めたのは三十代前半のことでした。鏡を見るたびに後退していく生え際と、薄くなった頭頂部が気になり、日に日に気分は落ち込んでいきました。なんとかしたい一心でインターネットを検索し、AGAクリニックの存在を知りましたが、その治療費は当時の僕にとって決して安いものではありませんでした。そんな時、目に飛び込んできたのが「AGA治療薬の個人輸入」という言葉です。クリニックの数分の一の価格で同じ成分の薬が手に入るという謳い文句に、僕はすっかり心を奪われました。これなら続けられる、と。早速、海外の個人輸入代行サイトで注文し、数週間後に国際郵便で薬が届きました。しかし、手にした薬のパッケージを見た瞬間、一抹の不安がよぎりました。本当にこれは本物なのだろうか。有効成分はちゃんと入っているのか。それとも、体に害のあるものが混じっているのではないか。その日から、薬を飲むたびに言いようのない不安に襲われるようになりました。効果が出ているのかどうかもよくわからず、むしろ初期脱毛なのか、偽薬のせいなのか、抜け毛が増えた気さえしました。誰にも相談できず、一人で悶々とする日々。結局、三ヶ月ほどで服用をやめてしまいました。そして気づいたのです。僕が失ったのは、わずかなお金だけではありませんでした。不安に苛まれた時間と、適切な治療を始めるべきだった貴重な時間を無駄にしてしまったのです。結局、僕は意を決して専門のクリニックの門を叩きました。医師の診察を受け、正規品を処方されたときの安心感は、今でも忘れられません。遠回りをしてしまいましたが、安さだけで選ぶことの愚かさを身をもって知る良い教訓になりました。