AGA治療を開始するにあたり多くの患者が抱く最大の疑問であり不安要素でもあるのが「この治療は一体いつまで続ければいいのか、もしかして一生薬を飲み続けなければならないのか」という点ですが、これに対する医学的に誠実かつ正確な回答は「髪を維持したいと望む期間はずっと継続する必要がある」というものになります。AGAすなわち男性型脱毛症は風邪や怪我のように一時的な治療で完治して薬が不要になる種類の病気ではなく、高血圧や糖尿病といった慢性疾患と同じく体質や遺伝的要因に基づいて進行し続ける性質を持っているため、治療薬によってその進行を食い止めている間だけ効果が持続するというのが大原則です。AGAの原因物質であるジヒドロテストステロン(DHT)は加齢とともに生成され続け、常に毛根に対して脱毛指令を出し続けていますが、フィナステリドやデュタステリドといった内服薬はこの指令をブロックする盾の役割を果たしており、服用を止めるということはその盾を捨てることを意味し、再びDHTの攻撃に晒された毛根はヘアサイクルの短縮を起こして薄毛の状態へと逆戻りしてしまいます。しかし、「一生飲み続ける」という言葉の響きに絶望する必要はありません。なぜなら、AGA治療には「攻めの時期」と「守りの時期」という二つのフェーズがあり、一生同じ強度やコストで治療を続けるわけではないからです。治療開始から半年から1年程度は、失われた髪を取り戻すための「発毛期」として、内服薬に加えて外用薬やメソセラピーなどを併用し、多少のコストと手間をかけてでも最大風速で髪を増やしますが、ある程度満足のいく毛量まで回復した後は、その状態をキープするための「維持期」へと移行します。維持期に入れば、基本的にはフィナステリドなどの安価な内服薬を一種類飲むだけで状態を保つことが可能になるため、経済的にも身体的にも負担は大幅に軽減されます。また、人生のステージにおいて「もうハゲていても構わない」と思える年齢や状況が訪れた時が、医学的な意味ではなく個人的な価値観に基づいた「治療の卒業(やめ時)」となります。例えば、子供が成人した、定年退職した、あるいは70歳を超えて周囲も薄くなってきたといったタイミングで、徐々に薬を減らしながら自然な加齢現象としての薄毛を受け入れていくというソフトランディングを選択する人も少なくありません。したがって、AGA治療は「終わりのないマラソン」ではなく、自分の人生設計に合わせてペース配分やゴール地点を自由に設定できる「コントロール可能な習慣」であると捉え直すことが、治療と長く付き合っていくための秘訣と言えるでしょう。