あれは確か社会人3年目の秋のことでしたが、毎朝のヘアセットが決まらなくなり、ワックスをつけてもすぐにペタンと潰れてしまう前髪に違和感を覚えたのが全ての始まりであり、最初は湿気のせいか髪質の変化だろうと高を括っていましたが、ある日友人が撮った写真に写る自分の頭頂部が蛍光灯の光を反射して地肌が透けているのを見た瞬間、背筋が凍るような恐怖を感じました。まだ20代半ばであり自分がハゲるなどとは夢にも思っていませんでしたが、ネットでAGAの初期症状を検索すればするほど、生え際の後退や髪の軟毛化といった項目が自分に当てはまることに気づき、認めたくない気持ちと手遅れになる前に何とかしなければという焦燥感の間で激しく揺れ動きました。数週間の葛藤の末、悩み続けてストレスを溜めること自体が髪に悪いと自分を鼓舞し、意を決してAGA専門クリニックの無料カウンセリングを予約しましたが、当日はクリニックが入っているビルのエレベーターに乗るだけでも周囲の目が気になり、まるで犯罪者が自首しに行くような重苦しい気分だったことを今でも鮮明に覚えています。しかし、一歩足を踏み入れるとそこは想像していたような暗い病院ではなく、プライバシーに配慮された清潔で明るい空間であり、カウンセラーや医師も非常に事務的かつ親切に対応してくれたため、拍子抜けすると同時に大きな安心感に包まれました。診察室でマイクロスコープを使って頭皮を拡大して見せてもらうと、自分では気づかなかった細く短い毛、いわゆる「ミニチュア化した毛」が多数混在していることが一目瞭然となり、医師から「AGAの初期段階ですね、今なら飲み薬だけで十分に維持・回復が可能ですよ」と診断された時は、ショックよりも原因が判明し対処法があることへの安堵感の方が勝りました。その日からフィナステリドの服用を開始し、半年が経つ頃には髪のコシが戻り、気になっていた地肌の透けも解消されましたが、あの時勇気を出して受診していなければ、今頃は確実に進行して取り返しのつかない状態になっていたと思うとゾッとします。初期段階での受診は決して大袈裟なことではなく、将来の自分を守るための英断であり、もし今一人で悩んでいる人がいるなら、その悩みは医学の力で解決できる可能性が高いのだから、恥ずかしさを捨てて専門家の扉を叩いてほしいと心から願っています。