医師監修のQ&A・治療体験談の紹介

抜け毛
  • 医師は頭皮の何を見る?AGAと他の脱毛症の鑑別診断ポイント

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    患者が薄毛の悩みを訴えてクリニックを訪れた際、医師は一体、頭皮の何を見て「AGAである」あるいは「AGAではない」と判断しているのでしょうか。その診断の裏側には、経験に基づいた観察眼と、科学的な根拠が存在します。診断の鍵を握るツールの一つが、数十倍から数百倍に頭皮を拡大して観察できる「マイクロスコープ」です。まず、典型的なAGAの場合、マイクロスコープで見ると特徴的な所見が観察されます。それは「毛髪の太さの不均一性」です。健康な頭皮では、一つの毛穴から生えている毛の太さは比較的揃っていますが、AGAが進行すると、男性ホルモンの影響でヘアサイクルが短縮され、十分に成長しきれない細く短い毛(軟毛)の割合が増えてきます。太い毛と細い毛が混在している状態は、AGAを強く疑うサインとなります。一方で、「AGAではない」と診断されるケース、例えば「脂漏性脱毛症」の場合は、所見が全く異なります。マイクロスコープを覗くと、毛穴の周りに黄色っぽい酸化した皮脂がこびりついていたり、頭皮全体が赤みを帯びて炎症を起こしていたりする様子が観察されます。毛髪自体の太さは比較的均一で、AGAのような軟毛化はあまり見られません。また、円形脱毛症の場合は、脱毛部分の境界が比較的はっきりしており、毛根が破壊されている様子が見られることもあります。医師はこれらのマイクロスコープ所見に加え、詳細な問診情報を組み合わせることで、診断の精度を高めていきます。いつから抜け毛が気になり始めたか(期間)、抜け方の特徴(全体的にか、局所的にか)、生活習慣の変化、既往歴など、患者から得られる情報も重要な判断材料です。このように、医師は複数の視点から総合的に判断を下しており、その診断には確かな根拠があるのです。

  • 僕の抜け毛の原因はAGAじゃなく過度なダイエットだった

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    社会人になってから増えた体重をリセットしようと、僕が自己流のダイエットを始めたのは半年前のことだった。とにかく早く結果を出したくて、夕食はサラダチキンだけ、朝と昼も炭水化物を極力抜くという、今思えば無茶苦uchaな食事制限を自分に課した。体重は面白いように落ち、二ヶ月で七キロの減量に成功。引き締まった体に満足していたのも束の間、異変は髪に現れた。シャンプーをするたびに、指に絡みつく髪の毛の量が尋常ではなくなったのだ。最初は気のせいだと思っていたが、明らかに髪全体のボリュームがなくなり、地肌がうっすらと見えるようになってきた。僕はパニックに陥った。「若くしてAGAになってしまった…」。そう思い込み、絶望的な気持ちで皮膚科のドアを叩いた。しかし、医師の診断は僕の予想を裏切るものだった。「AGAの所見は見られませんね。それよりも、最近、極端な食事制限などをしませんでしたか?」。そう問われ、僕はハッとした。医師は、僕の抜け毛の原因が遺伝的なものではなく、急激なダイエットによる深刻な「栄養不足」である可能性が高いと指摘した。髪の主成分であるタンパク質をはじめ、髪の成長に必要なビタミンやミネラルが絶対的に不足し、体が生命維持に直接関係のない髪の毛から栄養供給をストップさせた結果だという。診断後、僕は栄養士の指導のもと、バランスの取れた食事に戻すことを決意した。体重は少し戻ってしまったが、タンパク質、鉄分、亜鉛などを意識した食事を三ヶ月ほど続けると、あれほど抜けていた髪が落ち着き、生え際には新しい産毛が顔を出してくれた。この経験を通して、僕は大切なことを学んだ。見た目を良くするための行動が、かえって見た目を損なう結果を招くこともある。そして、髪は健康のバロメーターであり、体からの正直なメッセージなのだということを。

  • 専門医に聞く!AGAではない抜け毛で悩むあなたへ伝えたいこと

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    本日は、長年、脱毛症の臨床に携わってこられた皮膚科専門医の佐藤先生(仮名)に、AGAではない抜け毛についてお話を伺います。先生、患者さんから「AGAではない」と診断されて、かえって不安になる方も多いと聞きますが。「ええ、そのお気持ちはよくわかります。多くの方が『薄毛=AGA』というイメージをお持ちですから、それを否定されると『じゃあ原因は何なのか』と、より深い不安に陥ってしまうのですね。しかし、私たちが『AGAではない』と診断する時、それは決して突き放しているわけではなく、むしろ『改善の可能性が高いですよ』というポジティブなメッセージを込めていることが多いのです」。と、言いますと?「AGAは遺伝と男性ホルモンが関わる進行性の疾患で、治療のゴールは現状維持や緩やかな改善が主になります。一方で、例えばストレス性の休止期脱毛症や、頭皮環境の悪化による脂漏性脱毛症などは、原因を取り除き、適切なケアを行えば、多くの場合、髪の状態は治療前よりも良好に回復することが期待できます。つまり、原因が特定できれば、より明確なゴールを目指せるということなのです」。なるほど。先生が診断の際に重視される点は何でしょうか。「私たちは、マイクロスコープによる頭皮の状態観察を非常に重視します。毛穴の炎症の有無、皮脂の量、毛髪の太さの均一性などを詳細に見ることで、AGAとの鑑別を行います。AGAの場合、細く短い毛(軟毛)が多く観察されるという特徴がありますが、他の脱毛症ではそうした所見が見られないことが多いのです。また、患者さんの生活背景、つまり最近大きなストレスがなかったか、食生活はどうか、使っているヘアケア製品は何か、といった詳細な問診も、原因を特定する上で欠かせないパズルのかけらとなります」。最後に、悩んでいる方にメッセージをお願いします。「『AGAじゃない』という診断は、絶望ではなく希望の始まりです。あなたの髪の悩みには、必ず理由があります。私たち専門家と一緒に、その理由を見つけ出し、解決への道を歩んでいきましょう。どうか一人で抱え込まないでください」。

  • AGAじゃないのに抜ける髪?その不安と上手に向き合う方法

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    「AGAではありません」。医師からのその言葉は、本来なら安心材料のはず。しかし、それでもなお抜け毛が続くと、「原因不明」という底知れぬ不安に襲われ、精神的に追い詰められてしまうことがあります。髪の悩みは非常にデリケートで、他人に相談しにくいため、一人で抱え込んでしまうケースも少なくありません。このような、診断が出ても解消されない不安と、私たちはどう向き合っていけば良いのでしょうか。まず大切なのは、自分を責めないことです。抜け毛が続くのは、あなたのせいではありません。ストレス、生活習慣、ホルモンバランスの変化など、様々な要因が複雑に絡み合っている可能性があります。原因がすぐに見つからないからといって、自分を追い詰めないでください。次に、思考の焦点を少しだけずらしてみることをお勧めします。「なぜ抜けるのか」という原因追求ばかりに固執すると、不安は増幅しがちです。それよりも、「今、髪と頭皮のために何ができるか」という、建設的な行動に意識を向けてみましょう。バランスの良い食事を一日一食からでも始めてみる、寝る前の五分間、頭皮を優しくマッサージしてみる。こうした小さな成功体験の積み重ねが、自己肯定感を高め、不安を和らげてくれます。また、髪のことだけを考える時間を減らすことも重要です。趣味に没頭したり、友人と会話を楽しんだり、運動で汗を流したりと、髪の悩みから意識を解放する時間を作ることで、心のバランスが保たれやすくなります。そして何より、一人で抱えきれないと感じたら、専門家や信頼できる人に話を聞いてもらうことが大切です。先の見えない不安は、誰かに話すだけで大きく軽減されることがあります。AGAではないと言われたことは、あなたの体が送る、生活を見直すためのサインなのかもしれません。焦らず、一歩ずつ、ご自身の心と体に向き合っていくことが、解決への一番の近道です。