大学生活の後半から社会人になりたての二十代という人生で最も外見を気にする時期に鏡を見るたびに確実に広がっていく額の面積と深くなる剃り込み部分のM字ラインに直面した時の絶望感は筆舌に尽くしがたいものがあり友人と行く海やプールへの誘いを嘘をついて断ったり風の強い日には外出することさえ恐怖に感じたりするほど私の心は薄毛というコンプレックスに支配されていましたがそんな私が一念発起してAGA専門クリニックの門を叩き治療を開始してから一年後には失われかけていた青春と自信を取り戻すことができた実体験を一つの症例として詳細に記録します。私が異変を確信したのは就職活動中の証明写真を撮影した時で強いライトに照らされた自分の前髪が昔に比べて明らかにスカスカで頼りなく地肌が透けて見えている現実に愕然とし市販の育毛トニックや高価なシャンプーを買い漁り試しましたが効果は皆無でむしろ焦りからくるストレスで進行が加速しているようにさえ感じられました。社会人二年目の冬、久しぶりに再会した同級生に「お前、なんか老けたか?デコ広くなってない?」と悪気なく言われた一言が決定的な引き金となりその日の夜にネットで検索して見つけたクリニックの無料カウンセリングに震える手で予約を入れました。診断の結果は遺伝と男性ホルモンの影響による典型的な「男性型脱毛症(AGA)」であり進行レベルはハミルトン・ノーウッド分類でステージⅡからⅢへの移行期にあると告げられましたが担当医からは「二十代のAGAは進行が早いが、細胞の若さゆえに薬への反応も良く回復の可能性が非常に高い」という希望の持てる言葉をもらい、月額一万五千円ほどの治療費は安月給の身には重い負担でしたが飲み会を減らし趣味への出費を削ってでも未来の自分への投資として治療を開始する決意を固めました。処方されたのはフィナステリドによる脱毛抑制とミノキシジル内服薬による発毛促進の併用療法で治療開始から三週間後には「初期脱毛」と呼ばれる一時的な抜け毛の増加に見舞われ洗髪のたびに手に絡みつく大量の髪を見て心が折れそうになりましたが「これは新しい強い髪が生えてくるための生え変わり現象だ」という医師の説明を信じて歯を食いしばり耐え抜きました。変化の兆しが見え始めたのは治療開始から四ヶ月が経過した頃でM字部分のツルツルだった皮膚に黒くしっかりとした産毛が生え始め指で触れるとチクチクとした生命力を感じるようになり半年後にはその産毛が太く成長して前髪の隙間が埋まり始めました。そして一年が経つ頃には風が吹いても前髪が割れることを気にせず歩けるようになり美容院で「前髪を上げて額を出すスタイルにしてください」とオーダーできた時の感動と高揚感は一生忘れることはないでしょう。この症例を通じて私が同世代に伝えたいのは若くして薄毛になることは恥ずかしいことではなく病気の一種であり早期に適切な医学的介入を行えば高確率で改善できるということであり一人で悩み続けて貴重な二十代を暗い気持ちで過ごすよりも勇気を出して専門医を頼り自分の手で青春を取り戻してほしいと心から願っています。