AGAヘアクリニックで治療を始めて、今日でちょうど三ヶ月が経った。毎朝、薬を飲む。毎晩、頭皮に薬を塗る。ただそれだけの、地味な毎日。正直、最初の二ヶ月は不安しかなかった。噂に聞いていた初期脱毛が始まり、シャンプーをするたびに指に絡みつく髪の毛の量に、心が折れそうになった。本当にこの治療は合っているんだろうか。高いお金を払って、むしろ悪化させているんじゃないか。そんな疑念が頭の中をぐるぐると巡っていた。それでも、カウンセリングの時の医師の「大丈夫、効いている証拠ですよ」という言葉を、お守りのように胸に抱いて、なんとか続けてきた。そして、三ヶ月目の、ある朝のことだった。いつものようにシャワーを浴び、鏡の前でドライヤーをかけていた。その時、ふと、生え際が気になった。いつもは後退していくことばかり気にしていた生え際に、何やら黒い点々が見える。目を凝らして、鏡に顔を近づけてみた。それは、紛れもなく産毛だった。細くて、まだ頼りないけれど、確かにそこに存在している黒々とした生命。思わず、指でそっと触れてみた。チクチクとした、でも、とてつもなく愛おしい感触。その瞬間、全身の力が抜けるような、それでいて体の芯から何かが湧き上がってくるような、不思議な感覚に包まれた。これか。これが、効果が出始めたっていうことか。気づけば、鏡に映る自分に向かって、僕は小さくガッツポーズをしていた。この三ヶ月の不安や苦労が、すべて報われた瞬間だった。この小さな産毛たちが、僕の希望だ。まだまだ道は半ばだけど、この感動がある限り、僕はこれからも治療を続けていける。そう確信した、忘れられない朝になった。