本日は、長年、脱毛症の臨床に携わってこられた皮膚科専門医の佐藤先生(仮名)に、AGAではない抜け毛についてお話を伺います。先生、患者さんから「AGAではない」と診断されて、かえって不安になる方も多いと聞きますが。「ええ、そのお気持ちはよくわかります。多くの方が『薄毛=AGA』というイメージをお持ちですから、それを否定されると『じゃあ原因は何なのか』と、より深い不安に陥ってしまうのですね。しかし、私たちが『AGAではない』と診断する時、それは決して突き放しているわけではなく、むしろ『改善の可能性が高いですよ』というポジティブなメッセージを込めていることが多いのです」。と、言いますと?「AGAは遺伝と男性ホルモンが関わる進行性の疾患で、治療のゴールは現状維持や緩やかな改善が主になります。一方で、例えばストレス性の休止期脱毛症や、頭皮環境の悪化による脂漏性脱毛症などは、原因を取り除き、適切なケアを行えば、多くの場合、髪の状態は治療前よりも良好に回復することが期待できます。つまり、原因が特定できれば、より明確なゴールを目指せるということなのです」。なるほど。先生が診断の際に重視される点は何でしょうか。「私たちは、マイクロスコープによる頭皮の状態観察を非常に重視します。毛穴の炎症の有無、皮脂の量、毛髪の太さの均一性などを詳細に見ることで、AGAとの鑑別を行います。AGAの場合、細く短い毛(軟毛)が多く観察されるという特徴がありますが、他の脱毛症ではそうした所見が見られないことが多いのです。また、患者さんの生活背景、つまり最近大きなストレスがなかったか、食生活はどうか、使っているヘアケア製品は何か、といった詳細な問診も、原因を特定する上で欠かせないパズルのかけらとなります」。最後に、悩んでいる方にメッセージをお願いします。「『AGAじゃない』という診断は、絶望ではなく希望の始まりです。あなたの髪の悩みには、必ず理由があります。私たち専門家と一緒に、その理由を見つけ出し、解決への道を歩んでいきましょう。どうか一人で抱え込まないでください」。