AGA治療によって取り戻した髪の毛。もし、この治療を中断したら、その髪は一体どうなってしまうのでしょうか。多くの人が抱くこの不安に対して、残念ながら答えは明確です。治療をやめれば、時間をかけてゆっくりと、しかし確実に治療前の状態へと戻っていきます。これは「リバウンド」とも呼ばれますが、実際には薬の効果が切れて、本来のAGAの進行が再開する、という方が正確な表現です。AGA治療薬は、薄毛の原因物質であるDHTの生成を抑制することで効果を発揮しています。服用を中止すると、数日後には血中の薬物濃度はほぼゼロになり、DHTの生成を抑える力が失われます。すると、体内のDHT濃度は治療前のレベルまで再び上昇し、毛根のヘアサイクルを乱す働きを再開します。その結果、成長期が短縮され、髪が十分に太く長く育つ前に抜け落ちるという、AGA特有の現象が再び起こり始めるのです。この変化は、治療をやめてすぐに現れるわけではありません。髪にはヘアサイクルがあるため、薬の効果が切れてから実際に抜け毛が増え、見た目の変化として現れるまでには、一般的に三ヶ月から半年、人によっては一年程度の時間がかかると言われています。最初は気づかないかもしれませんが、徐々に髪のハリやコシがなくなり、抜け毛が増え、分け目や生え際の地肌が目立つようになってくるでしょう。せっかく時間とお金をかけて治療したのに、すべてが無駄になってしまうのかと落胆するかもしれません。しかし、これは治療が失敗したわけではなく、薬が確かに効いていたことの裏返しでもあります。この事実を理解しておくことは、治療の継続性を判断する上で非常に重要です。自己判断での中断が、いかに大きな後退を意味するかを肝に銘じ、今後の計画を慎重に立てる必要があります。