30代半ばでAGA治療を決意した私が直面した最初の試練は、想像を絶する初期脱毛でした。クリニックで医師から説明は受けていたものの、実際に洗髪のたびに排水溝が真っ黒になるほどの抜け毛を目にすると、冷静ではいられませんでした。「本当にこれで髪が生えるのか?」「逆にハゲてしまっているのではないか?」という恐怖が毎晩襲ってきました。治療開始から2週間後くらいに始まったこの脱毛は、私の場合、約1ヶ月半ほど続きました。その間、通勤電車で座ることを避けたり、友人の誘いを断ったりと、精神的にも追い詰められていました。しかし、私が治療を中断しなかったのは、ネット上の体験談や医師の言葉を信じていたからです。「初期脱毛は好転反応」「夜明け前が一番暗い」という言葉を呪文のように唱え、とにかく薬を飲み続けました。また、少しでも気を紛らわせるために、帽子を新しいものに変えたり、育毛に良いとされる亜鉛やビタミンを積極的に摂ったりと、できることは全てやりました。変化が訪れたのは治療開始から3ヶ月が過ぎた頃です。あれほどひどかった抜け毛がピタリと止まり、鏡で頭皮をよく見ると、産毛のような短い毛が無数に生えているのに気づいたのです。そこからの回復は劇的でした。産毛は次第に太く黒い髪へと成長し、半年後には地肌が透けて見えていた部分がしっかりとカバーされるまでになりました。今では、美容室で髪型をオーダーする楽しみも取り戻しました。あの時、初期脱毛の恐怖に負けて治療を辞めていたら、今の自分はいません。もし今、初期脱毛で苦しんでいる人がいるなら、私は大声で伝えたいです。「絶対に諦めないで。その抜け毛の次には、最高の髪が待っているから」と。AGA治療に関する診察を行っていると、患者さんから「薬を飲み始めたのに初期脱毛が起きません。効果がないのでしょうか?」という質問を受けることがよくあります。ネット上の情報などで初期脱毛が治療効果のバロメーターであるかのように語られているため、抜け毛が増えないことに不安を感じる方が多いようです。結論から申し上げますと、初期脱毛が起きないからといって効果がないとは限りません。初期脱毛の有無や程度には大きな個人差があり、全く気にならない程度の人もいれば、ごっそりと抜ける人もいます。初期脱毛が起きにくいケースとしては、元々のAGAの進行が初期段階で、休止期にある毛包がそれほど多くなかった場合や、ヘアサイクルの変化が緩やかに進んでいる場合などが考えられます。また、使用している薬剤の種類や濃度によっても反応は異なります。例えば、内服薬よりも外用薬の方が、全身への作用が限定的であるため、初期脱毛がマイルドになる傾向があります。重要なのは、初期脱毛があるかどうかではなく、最終的に発毛効果が得られるかどうかです。治療開始から3ヶ月から6ヶ月経過した時点で、マイクロスコープなどで観察し、毛髪の太さや密度に改善が見られれば、治療は順調に進んでいると判断できます。