AGAの初期症状を感じ始めた際、多くの人がまず試みるのが、睡眠時間を増やしたり、食生活を見直したり、頭皮マッサージをしたりといった生活習慣の改善ですが、果たしてこれだけでAGAの進行を食い止めることができるのかという問いに対して、医学的な結論は残酷ながら「NO」と言わざるを得ません。もちろん、規則正しい生活やバランスの取れた食事、ストレスのない環境は、身体全体の健康を増進し、髪の成長に必要な土壌を整えるという意味で決して無駄ではなく、治療の補助的な役割としては重要ですが、AGAの根本原因である男性ホルモンと酵素の結合による脱毛メカニズムそのものを止める力はありません。AGAは、テストステロンが5αリダクターゼという酵素によってジヒドロテストステロン(DHT)に変換され、それが毛乳頭細胞の受容体に結合することで脱毛指令が出されるという、遺伝子レベルでプログラムされた生理現象であり、いくら睡眠をとっても、いくら海藻を食べても、この体内の化学反応を止めることはできないのです。生活習慣の改善だけでどうにかなるのは、過度なダイエットや一時的なストレスによる休止期脱毛症などの場合であり、AGAに関しては医療機関での薬物療法が必須となります。ネット上や口コミでは「シャンプーを変えたら治った」「マッサージで生えた」といった情報が溢れていますが、これらは医学的根拠に乏しいか、たまたま時期が重なっただけの個人の感想に過ぎず、これらを鵜呑みにして貴重な初期治療の期間を浪費してしまうことは、取り返しのつかない損失につながります。厳しい言い方になりますが、AGAは生活習慣病ではなく、進行性の疾患であるという認識を持つことが重要です。初期段階であればあるほど、生活習慣で治せるのではないかという淡い期待を抱きがちですが、その期待は裏切られる可能性が高く、結果として進行を許してしまいます。本当に髪を守りたいのであれば、生活習慣の改善はあくまで薬物療法のサポート役として位置づけ、まずは医学的に効果が証明されているフィナステリドなどの内服薬で脱毛のスイッチをOFFにすることを最優先事項とすべきです。正しい知識を持ち、非科学的な対策に逃げずに現実的な治療を選択することこそが、初期AGAを克服する唯一の道なのです。