社会人になってから増えた体重をリセットしようと、僕が自己流のダイエットを始めたのは半年前のことだった。とにかく早く結果を出したくて、夕食はサラダチキンだけ、朝と昼も炭水化物を極力抜くという、今思えば無茶苦uchaな食事制限を自分に課した。体重は面白いように落ち、二ヶ月で七キロの減量に成功。引き締まった体に満足していたのも束の間、異変は髪に現れた。シャンプーをするたびに、指に絡みつく髪の毛の量が尋常ではなくなったのだ。最初は気のせいだと思っていたが、明らかに髪全体のボリュームがなくなり、地肌がうっすらと見えるようになってきた。僕はパニックに陥った。「若くしてAGAになってしまった…」。そう思い込み、絶望的な気持ちで皮膚科のドアを叩いた。しかし、医師の診断は僕の予想を裏切るものだった。「AGAの所見は見られませんね。それよりも、最近、極端な食事制限などをしませんでしたか?」。そう問われ、僕はハッとした。医師は、僕の抜け毛の原因が遺伝的なものではなく、急激なダイエットによる深刻な「栄養不足」である可能性が高いと指摘した。髪の主成分であるタンパク質をはじめ、髪の成長に必要なビタミンやミネラルが絶対的に不足し、体が生命維持に直接関係のない髪の毛から栄養供給をストップさせた結果だという。診断後、僕は栄養士の指導のもと、バランスの取れた食事に戻すことを決意した。体重は少し戻ってしまったが、タンパク質、鉄分、亜鉛などを意識した食事を三ヶ月ほど続けると、あれほど抜けていた髪が落ち着き、生え際には新しい産毛が顔を出してくれた。この経験を通して、僕は大切なことを学んだ。見た目を良くするための行動が、かえって見た目を損なう結果を招くこともある。そして、髪は健康のバロメーターであり、体からの正直なメッセージなのだということを。