日本には、医薬品を適正に使用したにもかかわらず、入院が必要になるほどの重篤な健康被害が生じた場合に、医療費や障害年金などを給付する「医薬品副作用被害救済制度」という公的なセーフティネットが存在します。この制度は、万が一の際に患者が経済的な心配をせずに治療に専念できるようにするための、非常に重要な仕組みです。しかし、この手厚い救済制度は、個人輸入によって入手した医薬品による健康被害には一切適用されないという事実を、利用を考える前に必ず知っておくべきです。個人輸入したAGA治療薬が原因で、例えば重い肝機能障害を発症し、長期の入院や治療が必要になったとしても、その医療費は全額自己負担となります。さらに、後遺症が残った場合の障害年金なども給付されることはありません。制度の対象となるのは、国内で厚生労働省の承認を受け、製薬会社の厳格な品質管理のもとで製造され、医師の処方や薬剤師の指導を通じて正規に流通した医薬品に限られます。個人輸入薬は、その安全性も品質も公的に保証されていないため、救済の対象外とされるのは当然のことです。わずかな薬代を節約するために、万が一の際に数十万、数百万円にもなりかねない医療費の補償を自ら放棄する行為が、果たして賢明な選択と言えるでしょうか。AGA治療は継続的な服用が基本となるからこそ、長期的な視点での安全性とリスク管理が不可欠です。目先の安さというメリットと、公的な保護を失うというデメリットを天秤にかけたとき、どちらが自身にとって重要かは明白ではないでしょうか。