男性型脱毛症の治療をいつから始めるべきかという問いに対して、多くの専門家や経験者が口を揃えて言う答えは、気になったその時がベストタイミングであるということです。なぜなら男性型脱毛症は進行性の疾患であり、風邪や怪我のように自然治癒することは絶対にないからです。もしあなたが鏡を見て以前よりも髪のボリュームが減ったと感じたり、お風呂上がりの排水溝に溜まる抜け毛の量に恐怖を覚えたり、あるいは友人や家族から髪が薄くなったのではないかと指摘されたりしたならば、それはすでに身体の中で脱毛のメカニズムが進行している証拠であり、その瞬間から一日でも早く対策を講じなければ、失われた髪を取り戻すための労力と費用は日ごとに増していくことになります。多くの人が陥りがちな罠として、まだ自分は大丈夫だとか、もう少し様子を見てから考えようという先延ばしの心理がありますが、この様子見の期間こそが最も危険な空白の時間であり、その間にも毛根は男性ホルモンの影響を受け続け、ヘアサイクルは徐々に短縮され、やがては寿命を迎えて二度と髪が生えてこない毛穴へと変貌してしまうのです。人間の髪の毛には一生のうちに生え変わる回数に限界があり、通常は四十回から五十回程度と言われていますが、男性型脱毛症を発症すると成長期が極端に短くなるため、この貴重な生え変わりのチケットを猛スピードで消費してしまうことになります。つまり、治療を先延ばしにするということは、将来生えるはずだった髪の寿命をドブに捨てているのと同じことなのです。二十代や三十代の若い世代であればあるほど、進行のスピードが速い傾向にあるため、まだ若いからといって安心することはできませんし、むしろ若いからこそ早期発見早期治療が功を奏し、周囲に気づかれる前に現状を維持し、豊かな髪を保ち続けることが可能になります。治療薬であるフィナステリドやデュタステリドは、乱れたヘアサイクルを正常に戻す働きがありますが、これは毛根が生きているうちに投与しなければ効果を発揮しません。完全に砂漠化してしまった頭皮にいくら水を撒いても草木が生えないように、毛根が死滅してしまってからでは手遅れなのです。もちろん、五十代や六十代になってから治療を始める人もたくさんいますし、効果が出ることもありますが、やはり残存している毛包の数や細胞の活性度を考えると、開始時期は早ければ早いほど有利であることは医学的に疑いようのない事実です。費用面を気にして治療を躊躇する人もいますが、進行してから行う自毛植毛やカツラ、あるいは高額なメソセラピーなどの施術費用と比較すれば、早期に内服薬だけで進行を食い止めるコストの方が圧倒的に安く済みます。つまり、経済的な観点から見ても、いつから始めるかという問いの正解は今すぐということになるのです。