AGAは決してある日突然髪が抜け落ちてツルツルになる病気ではなく、長い時間をかけて徐々に進行していくものであり、その初期段階において身体が発しているSOSサインを正確にキャッチできるかどうかが治療の成否を分ける重要なポイントとなりますが、多くの患者様はそのサインを見逃しがちです。医師として推奨するセルフチェックのポイントは単に抜け毛の本数を数えることではなく、抜けた髪の「質」と残っている髪の「変化」に注目することであり、これによりAGAの初期症状を高確率で見極めることができます。まず抜け毛のチェックですが、健康な人の抜け毛はヘアサイクルを全うして抜けるため、毛根がマッチ棒のように膨らんでおり太くて長いのが特徴ですが、AGAの初期段階では成長途中で抜けてしまうため、毛根に膨らみがなく先細りしており、細くて短い抜け毛が増える傾向にあります。洗髪後や枕元に落ちている抜け毛の中に、あきらかに他の髪よりも細く、産毛のような短い毛が混ざっている割合が増えてきたら、それはヘアサイクルが短縮している強力な証拠であり、AGAが発動している可能性が極めて高いと言えます。次に生え際や頭頂部の変化ですが、おでこが広くなった気がするという感覚的なものだけでなく、昔の写真と比較して生え際のラインがM字に食い込んでいないか、あるいはつむじ周辺の地肌が見える範囲が広がっていないかを客観的に確認することが大切です。また、髪質の変化も重要な指標であり、以前は直毛で硬かった髪が、なんとなくうねるようになったり、コシがなくなり柔らかくなったりして、スタイリング剤をつけても立ち上がりが悪くなったと感じる場合、それは毛包が弱り髪を太く育てる力が失われつつある「軟毛化」のサインです。さらに、頭皮の状態にも注目が必要で、AGAの原因物質であるジヒドロテストステロンは皮脂の分泌を促す作用もあるため、頭皮が以前よりも脂っぽくなり、夕方になるとおでこがテカるといった症状も、AGAの初期に見られる身体的変化の一つです。これらのサインが一つでも当てはまる場合は、自己判断で市販の育毛剤やシャンプーに頼るのではなく、皮膚科専門医によるダーモスコピー検査や血液検査を受けることが推奨されます。AGAは進行性の病気ですが、初期に発見し適切な治療を開始すれば、ほとんどのケースで外見上の変化を食い止め、あるいは改善させることが可能ですので、自分の髪からの小さな悲鳴を聞き逃さない観察眼を持つことが、フサフサな未来を守る第一歩となります。
専門医が教えるAGA発症のサインとセルフチェック法